この事例の依頼主
70代 男性
相談前の状況
52歳で死亡した会社経営者Aの叔父Bからの相談。Aは中学生のときに父親を亡くし、父親が創業した会社は、跡取り息子のA(兄弟はいない)がまだ子供だったため、Aの母とその弟Bが経営し、Aは成人してその会社に入社した。Aの母の死後、Bは会社の代表取締役の座をAに譲り、もうそろそろ引退しようかと考えていた。ところが、Aが突然発病して入院し、1週間後に意識を失い、意識が回復しないまま2か月後に死亡してしまった。Aは未婚で子供もなく、両親も既に他界し、兄弟もいない。つまり、相続人がいないということである。Aの経営する会社は、従業員15名、年商2億円であり、自社ビルを所有しているが、その敷地はA名義である。会社の株の95%はAが保有している。Aに相続人がいないとなると、会社はどうなってしまうのか。Aに相続人はいないが、叔父BがAの父親代わりのような存在で、Aの父親亡き後会社を支えてきたので、Aの特別縁故者として、家庭裁判所に相続財産の分与を申し立てることにした。
解決への流れ
まずはAの相続財産管理人選任の申立てをし、一定期間経過後、特別縁故者に対する相続財産分与の申立てをした。AとBの関係について、Aの両親とBの関係まで遡って詳細な事情を聴取し、BがA及びAの両親と家族同様の関係であったことを示す証拠を収集して裁判所に提出たところ、相続財産管理人は、Aの相続財産全部をBに分与するのが相当である旨の意見を出し、裁判所もこれを認めた。これにより、会社の存続も無事確保することができた。
Aが遺言書を書いていれば何の問題もなかったわけですが、70代の叔父Bとしては、まさか52歳のAが自分より先に亡くなるとは思っておらず、Aが入院した後に慌てて公証人を病院に呼んで遺言書を作らせようとしたものの、既にAはしゃべることもできなくなっていたため、遺言書を作ることができませんでした。家庭裁判所の手続を経てBが財産を取得することができたのは幸いでしたが、時間と費用もかかりますし、早いうちから相続の準備をしておくことが大切です。