この事例の依頼主
女性
相談前の状況
数十年間にわたり家賃滞納を繰り返している賃借人を退去させたい希望があるものの,賃借人は気が向いたときに少しずつ滞納家賃を支払ってくるうえ,賃料額が減額されたとか滞納家賃のうち免除された部分があるなどと主張して退去要求を強く拒否するため,裁判をしても勝てるのか分からず法的手続きに踏み切れなかったが,どうしても賃借人に建物から退去してほしい事情が発生したため裁判を起こしてでも賃借人を退去させてほしいとの相談でした。
解決への流れ
裁判官は,当初,賃貸借契約の解除につき否定的な心証を示していましたが,数十年間分の家賃に関する膨大な量の収支資料を精査し,賃借人の悪質性を的確に主張することで,最終的には賃貸借契約を解除して建物をこちらに明け渡すよう命じる判決を獲得することができました。その後,賃借人は控訴しましたが,控訴審でも賃借人の主張は認められませんでした。当方は,強制執行の準備をしていましたが,賃借人が強制執行の前日に自ら退去することで解決できました。数十年間もの長期間にわたって悩んでいた依頼者には大変喜んでいただけました。
現在の法制度のもとでは賃借人が厚く保護されているため,賃借人が多少の契約違反をしたくらいでは、賃貸人側から賃貸借契約を解除して賃借人に対して退去を求めることができないことも少なくありません。しかし,家賃の滞納等の問題を放置しておくと,滞納額が高額になったり,賃貸人が滞納分の支払いを免除したとみられる可能性が出てくるなど問題が深刻化する傾向にありますので,トラブルの初期段階から法的に適切な対応をとっておくことが重要です。また,裁判を起こしても,裁判官が賃借人が不動産を使い続けられる方向での和解を勧めてくることが多いため,判決結果の見通しを正確に立てることができる弁護士に依頼することが重要であると思います。