この事例の依頼主
30代 男性
会社員である30代の男性からお子さんの連れ去り問題に関するご相談を受けました。具体的な相談内容は以下のとおりです。私と妻の間には保育園に通っている3歳の男児が一人います。しかし、妻とはもう1年近く別々に暮らしていました。そして、子どもは私と一緒に生活していましたが、毎週日曜日に妻と三人で面会していました。離婚協議を進めている最中ではありますが、これまで面会やその他諸々に関するトラブルが発生したことはありませんでした。そして離婚調停の申立てを行いましたが、妻からの反応は特にありませんでした。しばらく反応を待つしかないと思っていましたが、ある日保育園に息子を迎えに行ったときに事態が急変しました。会社が終わって(朝が早い仕事なので、保育園が終わる時間に間に合うのです)いつもどおり保育園に直行したのですが、なんと保育士さんから「奥様が既にお迎えに来ましたが……」と言われてしまったのです。私が焦って「妻が何か言っていませんでしたか?」と問い詰めましたが、保育士さんは「『久しぶりに私が迎えに来ました。夫とは話がついているので』とおっしゃっていましたが……」と困惑していました。このとき、保育園側にも我が家の事情を伝えておけば良かったと後悔しました。「世間体もあるし、家庭の内情を報告するのは避けたい」と考えてしまったのが間違いでした。また、妻がこのような強硬手段に出るとは全く思っておらず、油断していたという側面もあります。私は一旦冷静になるために自宅に戻り、その後すぐに妻のスマートフォンに電話をかけました。ですが、何回電話をしても出てくれません。メールやLINEも何度も送りましたが、全て無視されてしまいます。ただ、LINEは既読になるので、私のメッセージを見ているということは確かでした。このまま妻だけに連絡をしていても埒が明かないと思い、妻の親戚に内容をぼかして「もしかして妻がそちらに遊びに行っていないでしょうか?もしそうでしたら、急なことで大変ご迷惑を……」とメッセージを送ってみました。ですが全て不発だったので、できれば避けたかったことですが、妻の実家のお義母さんの携帯電話にメールをしました。すると、ついに妻と息子が、妻の実家にいることが判明しました。しかし、どうも妻がお義母さんを抱き込んでいるようであり、「今私は、あなたに娘(妻です)と孫(息子です)を返すわけにはいかないと考えています」という返事が来てしまいました。そこで、お義母さんに今度は電話をして、「今回の件は妻が勝手に息子を連れ去って、そのまま反応をしてくれない状態でしかない。確かに離婚調停の申立てをする事で動揺させたかもしれないが、これについては妻が全て悪い」という説明を丁寧に行いました。するとお義母さんが事情を理解してくれて妻と話を繋いでくれました。今度はそのまま妻と話をしたのですが、「帰るつもりはない。親権は私のものだ」の一点張りでどうにもなりません。妻に親権を渡す約束をすれば、この事態は打開できるのかもしれません。ですが、このような行動に出る妻に親権を譲ってしまえば、今後息子がどうなってしまうのか分かったものではありません。しかし、これ以上妻に連絡を入れようとしたところで、事態が好転するとは思えませんし、妻が最悪の行動に出る可能性もゼロとは言えないので相談させていただきました。※これらの内容は個人を特定できないよう、相談者の承諾を得て編集し載せております。======
焦りながら弁護士さんに相談しましたが、最初に「まずは急いで各種の手続きを進める必要があります」と言われました。詳しいことは分からないのですが、どうも様々な処理を進めていかなければならないようなので、全面的に協力させていただく事にしました。ただ、息子のことが心配だったので、お義母さんに相談して、「法的な手続きが終わるまでは妻や息子の世話は、全部お義母さんに任せる」という話になりました。そして、諸々の処理が5日ほどで終わり、そのまま裁判を行うことになりました。弁護士さんが説明してくれましたが、どうやら家庭裁判所が「緊急性が高い」と判断したので、審問期日を決めてくださったようです。そして、裁判を行うことになりました。私と妻の両方が主張をしたのですが、妻の言っていることは素人の私が聞いても明らかに支離滅裂だったので、そのまま私に息子が引き渡されることとなりました。ちなみに、妻が素直に応じなければもっと面倒なことになっていたそうですね。妻が頑なにならなかったことだけは不幸中の幸いだったと思っています。結果として、トータルで30日もかからずに息子を取り戻すことができたので安心しています。今回の一連の騒動が終わるまで本当に心が休まるときがありませんでしたが、弁護士さんが真剣に対応して下さったので何とかなりました。また、妻と息子の世話をずっと任せてしまったお義母さんにも頭が上がりません。私と息子が落ち着きましたら、今度はもう一度離婚に向けて動き出そうと考えています。今回のような蛮行をする妻に親権を渡すわけにはいかないので、尽力していく心づもりです。ちなみに、私は最初は「離婚」と「子どもを取り戻すこと」を同時に進めていくつもりだったのですが、弁護士さんのアドバイスでそれは個別に行っていくこととなりました。結果的に、私も息子を保護することに集中できたので良かったです。※これらの内容は個人を特定できないよう、相談者の承諾を得て編集し載せております
依頼者様が早急にご相談くださったのが功を奏しました。なぜなら本件のように「緊急性がある」と判断された場合でも、依頼者様が仰っているように、引き渡しの完了までに30日ほどかかるのが普通だからです。お義母様に奥様と息子さんの世話を任せたことも、素晴らしい判断でした。長引いてしまうと状況がややこしくなって、家庭裁判所の判断もこちらにとって好ましくないものになる場合もあります。また、このような問題に慣れていない弁護士だと「当事者同士の交渉」を提案してくれるかもしれませんが、それでは手遅れになってしまう恐れがあります。「弁護士の行動が鈍い、積極性がない」と感じたのであれば、別の弁護士に切り替えることもご検討ください。さらに、これも依頼者様が仰っていますが、「離婚問題」と「子どもの保護」は切り離して行うべきです。理由としましては、まず「結果的にどちらも進行が遅くなってしまう」という事が一つ。そして、もう一つは「家庭裁判所が、引き渡しと離婚を一度には認めない可能性がある」というものです。また、個別に進めたほうが相談者様の精神的な負担も少なくなるはずです。ちなみに今回は、「看護者指定」「保全処分」「引き渡し審判」を行いました。本件のような連れ去り事件ではこのようになる場合が多いです。ただし、本件と違って相手方がさらなる強硬手段に出ることもあるので、覚悟が必要ではあります。