この事例の依頼主
50代 男性
相談前の状況
戦後長く経営してきた金属部品工場でしたが,取引先の海外移転で売上が減少。社長が個人の資産を会社につぎ込んで従業員の給料を支払い経営を維持してきましたが,ついに限界を超えてしまった。会社には何も資金がなく,来月の支払いもできない見込であり,社長が弁護士に相談した。
解決への流れ
会社の最盛期と比べ売上は10分の1,営業利益は毎月赤字で,既に事業として成立し得ない状況であり,特段の支援者もいない状況で,会社の負債の整理の方法としては自己破産しかないと考えられました。破産の手続で必要な実費(裁判所に収める予納金や弁護士費用)すら残っていない状態でしたので,売掛金の回収を行い,従業員の解雇予告手当や退職金の支払や手続費用に充て,事業所の明渡し等を行い,最低限の筋を通した上で破産申立を行いました。
社長が個人の資産をつぎ込んで会社を支えてきた経緯がありましたから,破産手続でも社長の過去の尽力について従業員や取引先に説明をしました。会社の破産は残念な会社の終わり方ではありますが,社長が努力を尽くしたことについて関係者より一定の理解を得られた事案でした。会社の倒産時には,社長の過去の経営姿勢が評価される場面がしばしばあります。最後に至るまで社長が誠実な経営がなさることは大変に貴いことです。なお,会社の経営難については,完全にお金が回らなくなってからではなく,少し前の段階から弁護士にご相談になることが大切です。より関係者に負担の少ない会社の整理ができる場合があります。