この事例の依頼主
年齢・性別 非公開
相談前の状況
被告病院は、「アルコール性肝硬変寛解、主として糖尿病のフォロー実施」との診療情報提供書を受け取っていたものの、3年以上にわたって、たった1回腹部超音波検査を行った以外は、画像検査を行わず、腫瘍マーカーの測定も全く行わないままでした。その結果、たまたま肝数値の異常に気付いた主治医が画像検査を行った際には、肝右葉に15センチ大の巨大な肝臓癌が生じていました。患者は、入院となりましたが、結局、肝臓がんにより死亡するに至りました。ご遺族から相談を受けて、訴訟提起をしました。
解決への流れ
アルコール性肝硬変の患者は、肝臓がん発症のリスクが高く、定期的な検査が不可欠であるにもかかわらず、全く検査が行われていなかった点に過失があるとして、訴訟を提起しました。肝臓がんのリスクがある患者の経過観察について、医学文献等を提出し、問題点を丁寧に立証するようにしました。
裁判所も病院側の過失を認めるとの心証であったため、勝訴的な和解となりました。長期間通院していたにもかかわらず、早期に肝臓がんを発見してもらえなかったご本人及びご遺族の無念さを反映させるために、和解条項に「肝硬変に対する経過観察について、遺憾の意を表する」という文言を盛り込ませました。