犯罪・刑事事件の解決事例
#慰謝料・損害賠償 . #人身事故

株式会社の経営者で役員報酬をもらっていたが、実質的には一人で働いていた女性が事故に遭った事例で、休業損害として役員報酬分が認められた。また、長期間の接骨院への通院が治療として認められた例。

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名取 孝浩 弁護士が解決
所属事務所古淵法律事務所
所在地神奈川県 相模原市南区

この事例の依頼主

30代

相談前の状況

相談者ご本人は株式会社の代表者で、事故前は役員報酬をもらっていました。もっとも、代表者といっても、従業員はバイト1名が一時的にいた程度で、ほとんど自営業と変わらない状態でした。ところが、交通事故に遭った後、収入は役員報酬であるからという理由で、保険会社から休業損害の支払いが否定されました。また、この方は交通事故後に整骨院に長期通院をしていたのですが、この整骨院への通院を保険会社は治療として認めず、治療の支払いも否定してきました。幸い、後遺障害は残らなかったのですが、治療費も休業損害も否定されてお困りの状態で、当職にご相談に来られました。

解決への流れ

とりあえず自賠責保険に対する被害者請求を行い、120万円の限度までの支払いを受けました。その後、民事調停を提起しましたが、話し合いがつかないため、結局訴訟となりました。訴訟では、株式会社の代表者で役員報酬が収入であったといっても、ご本人が働いて稼いだ月しか役員報酬が得られていないこと、従業員が短期のアルバイトだけでほぼ従業員がご本人一人であること、業務自体がマッサージ店の経営でありご本人の施術がなければ業務自体が行えていなかったこと、等を主張いたしました。そうしたところ、地裁判決で役員報酬が休業損害であると認められました。また、整骨院での治療費についても治療費として認められました。双方控訴しなかったため判決は確定し、保険会社から判決どおりの金額が支払われました。

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名取 孝浩 弁護士からのコメント

5年以上前の事件で、当時の書面データ等と記憶で復元するしかないのですが、役員報酬をもらっている法人代表の休業損害が認められた点で珍しい事案であり、紹介いたしました。事業者の休業損害は本当に難しいです。休んだことで「減収があった」という証明が難しいからです。役員報酬の例はさらに難しいです。役員報酬は役員としての地位の対価と考えられているため、休んでも報酬が下がることは通常ないので、休業による損害はないと認められる傾向があるからです。しかし、個別具体的な事案によっては認められる例もあります。保険会社の話はあくまで一般的な事例に対する判例に基づいているので、必ずしも鵜呑みにすることはありません。また、整骨院での治療費は保険会社からしばしば否定されますが、判決になると全否定される例はむしろ少ないです。もっとも、治療の必要性がないとして、一部が否定されることはあります。すべてに共通しますが、相手の保険会社の提案はあくまで「提案」であって、絶対の結論ではありません。保険会社は最終結論のように言いますが、それは「話し合いではこれ以上対応しない」という意味に過ぎません。裁判所から判決が出れば、相手方保険会社としてはそれに従わざるを得ません(控訴・上告することはありますが)。最終的な結論は裁判所に出してもらえばいいのです。もっとも、裁判所の判決が被害者の方に有利なものになるとは限りません。判決を取った方が有利か。それとも、和解でまとめた方が有利か。そもそも裁判に出すべきか。これは非常に冷静な判断が必要となります。被害者の方は冷静な判断は難しいですから、これは弁護士の最も重要な役割だと思います。