この事例の依頼主
30代 男性
3か月ほど前に、依頼者(夫)の妻が1歳の乳児を連れて別居したため、ご相談に来られたという事案です。なお妻は別居時に、夫名義の口座から妻名義の口座に約200万円を移していました。
【面会交流について】依頼者の方は乳児の面倒をよく見ていた子煩悩なお父さんでした。お子さんの年齢からいって父親が親権を取得するのは困難であろうと考えられたため、依頼者の方と協議のうえ、面会交流を確保することに全力を注ぎました。面会交流調停において、相手方(妻)はいろいろな理由を主張して面会交流に拒否的な姿勢を示しましたが、そうした主張が実際には理由になっていないことを主張書面で丁寧に説明するとともに、併せて相手方(妻)の内心の不安感・拒否感を払しょくするために最大限の努力を払いました。この結果、第三者機関立会のもとで面会交流を実現することができました。【財産分与について】相手方(妻)は別居の数か月前に約500万円を相手方(妻)の口座から下ろしていました。この500万円を夫婦共有財産にカウントしないのであれば、別居時における依頼者(夫)から相手方(妻)への約200万円の移動も財産分与として正当化されるという事案でした。このため、離婚調停における主張書面においては、夫婦双方の財産資料・家計資料を精査したうえで、別居数か月前の500万円が現在もなんらかの形で保持されているはずであり、これが夫婦共有財産に該当するという主張を行いました。相手方(妻)側はこの約500万円について、生活費等に費消した等、いろいろな理由を主張しましたが、こうした理由が全て成り立ち得ないことを証拠に基づいて一つ一つ丁寧に説明しました。その結果、相手方(妻)としてもそれ以上主張を維持することが難しくなり、最終的には、依頼者(夫)に解決金として200万円を戻すという内容での調停が成立しました。
離婚事件においてはしばしば起こることですが、面会交流のように相手方の気持ちを解きほぐし当方を信頼してもらわなければならない争点と、財産分与のように相手方の主張の矛盾や不合理な点を鋭く突かなければならない争点を、同時並行であつかわなければならないところが難しかった事案です。論理的に主張すべきところは主張しつつ、いたずらに相手方の感情を害さないように言葉遣い等には最大限意を用いたつもりです。これが結果的に奏功した形になり、ほっとしました。