この事例の依頼主
年齢・性別 非公開
【事故発生からご依頼までの流れ】鹿児島市在住の男性がバイクに乗って自車線を走行して交差点に進入したところ、対向車線を走行していた普通乗用自動車が前方を注視をすることなく交差点を右折してきたために、直進中のバイクと衝突し、右上腕開放骨折、びまん性脳損傷、急性硬膜下血腫、頭蓋底骨折、頚椎横突起骨折等の傷病を負いました。その後、1年6ヶ月ほど治療に励みましたが、高次脳機能障害は完全に治癒することがなかったため、加害者が加入する任意保険会社の指示通りに後遺障害診断書等の資料を集め、加害者が加入する保険会社に手続をしてもらって後遺障害等級の認定を受けました。認定結果は右上腕開放骨折について4級4号、高次脳機能障害について9級10号に該当する(併合3級)との判断で、合わせて賠償金額についても加害者が加入する保険会社から提示されました。【相談・依頼のきっかけ】保険会社とのやり取りは主に被害者の奥様が窓口を担当していたのですが、バイクの修理費を示談する際には、被害者と加害者の過失割合は35:65でした。しかし、人身の賠償金額が提示されたときにはそれが逆転して被害者と加害者の過失割合が60:40になっていたのです。これはおかしいと思って奥様が保険会社に電話したところ、これまでは親身に相談に乗っていたのが打って変わって、過失割合は覆らないことを告げられ、根拠となる裁判例が送られてくるような状況でした。自分自身ではどうにもできないと思い、法律事務所に相談に行くことを決めました。
【サポートの流れ(後遺障害認定申請+示談交渉)】当初は過失割合について争いたいという意向をお持ちでしたが、持参してきた資料を弁護士がチェックした結果、後遺障害等級についても争う余地があると判断いたしました。そこで、被害者本人と改めて面談し、認定された後遺障害等級について異議を申立てる方針を固め、立証資料の作成に着手致しました。その時点で後遺障害診断書が作成されてから既に1年が経過しており、当時の主治医の協力を得ることも困難ではないかと予想されましたが、医師面談を経てこちらの意図を懇切丁寧に説明することによって、何とか病院の協力を取り付けることができました。そこで改めて、高次脳機能障害に焦点を合わせた質問書を医師に送付し、医師からの回答書を得たのち、医学論文も添付して異議申立を行うこととしました。一方、異議申立にも結果が出るまである程度の時間を要することが予想されたため、異議申立に本格的に着手する前に、併合3級に相応する自賠責保険からの保険金額を回収し、当面の生活費に充てることにしていました。【結果】異議申し立てをした結果、高次脳機能障害について9級10号から7級4号へと変更され、全体で併合2級との結果を得ることができました。それに伴い、介護費用の請求も行うこととしましたが、高次脳機能障害はあくまでも7級4号で、1級や2級はもちろん、3級や5級にすら届いていないことから、介護費用について保険会社からの支払いを得ることは困難でした。しかし、この結果を一つの武器にして、過失割合について保険会社に譲歩を迫った結果、当初の提示額から2倍近い金額で示談することができております。
本件では後遺障害等級が既に認定されていましたが、高次脳機能障害について正確に評価されているとはいえませんでした。なぜならば、被害者の奥様にアドバイスをする人物がいなかったため、どうしても労働能力に大きな影響を与える右腕開放骨折に焦点が当たってしまい、頭部外傷に伴う労働能力喪失の程度に関する意識が欠落していたからです。そこで、当事務所が介入したあとはまず、奥様に頭部外傷に限定した労働能力喪失の程度について確認し、それをもって医師面談に臨みました。そして、カルテに基づく記載限りではありますが、医師からも頭部外傷に限定した労働能力喪失の程度について意見書を頂きました。結果、狙い通り、後遺障害等級の昇級を実現することができました。後遺障害等級が上がると示談交渉に際しても大きなアドバンテージを得ることができます。個々の損害項目について増額を求めることができることはもちろんですが、新たな損害項目についても請求することが可能になることがあります。今回の事例はまさにそのような事例で、高次脳機能障害が9級10号に留まる場合には付添介護費用や将来介護費用を認めた裁判例が皆無なのに対して、7級4号であれば介護費用を認めた裁判例も無いわけでは無かったため、被害者の生活状況を聴取したうえで、堂々と介護費用を請求致しました。この介護費用がストレートに認められることは無かったのですが、将来の器具装具購入費用を一部認めてもらうだけでなく、これを一つの武器として過失割合について相手方の保険会社に対して譲歩を迫ることができました。とはいえ、こちらの落ち度も無いわけでは無かったことから、訴訟に移行した場合のリスクも踏まえ、示談によって解決することとなりました。このページをご覧になった方の中にも、過失割合について納得がいかないという方も多いと思います。あるいは、「こちらにも落ち度があるから」と言ってしなくていい譲歩までしてしまう方もいらっしゃると思います。しかし、特に重傷を負われた被害者の方にとって、後遺障害が残存してしまった場合には、一生その障害と付き合っていかなければならないため、きっちりとその後の生活も見据えて、過度に譲歩しすぎないことが大事です。特に、重傷を負われた方の場合には、保険会社も親身になって対応してくれますが、直接の担当者が当事務所のように医学的知識に精通しているわけではありませんし、被害者が抱えている障害を余すところなく拾い上げるということもあまり期待はできません。この被害者の方の場合、後遺障害等級について争うと担当者に告げると、担当者は「せっかく認定してあげたのに」と仰いました。担当者にとっては、9級10号が適切な等級だろうと思っていたのです。もちろん、担当者の判断が正しい場合もありますので、一概にどうこう言えるものではありません。ただ、もし保険会社から賠償金額の提示があった場合には、それがどんなに高額であっても、一度弁護士に相談に行かれてみてください。この被害者の奥様は「まさか後遺障害等級が上がるとは思わなかった」と仰いました。弁護士に提示された賠償金額をチェックしてもらったら、あなたも思わぬ発見があるかもしれません。