この事例の依頼主
50代 男性
相談前の状況
相手方においてトラック運転手をしていた方が、十分な残業代をもらえていないということで相談にいらっしゃられました。
解決への流れ
受任後すみやかに相手方に受任通知を発して、運転日報等依頼者の労働時間が記録された資料の提示を求めました。そして、依頼者の残業代を計算してみると2年間で800万円程度、そのうち200万円強しか支払われていないことがわかりました。残額をすみやかに支払うよう求めたところ、相手方は未払残業代はないとの回答であり、金額も大きく悪質性の高い事案だったので(残業代未払いは犯罪です)、労働基準監督署に通告を行いました。すると、相手方は「計算をし直したところ、240万円程度の未払いがあったとのことなので支払いたい」と言い出してきまして、それを受領しました。当然のことながらまだ300万円足りないので、その残額について訴訟を提起したところ、提訴から約3年と時間がかかってしまいましたが300万円の回収をすることができました。
この会社だけかはわかりませんが、この会社のトラック運転手の給与体系は、会社が言うには、(かなり割愛すると)「基本給」と固定残業代を意味する「乗務手当」を他の会社にいう基本給として支払っており、勤務手当に含まれる残業時間を超えて初めて「残業代」が発生するようなのですが、「乗務手当」はあくまで固定残業代として支払っているので残業代の時間単価は「基本給」を基準として計算されるとのことでした。しかしながら、定額残業代が適法とされるには①基本給との区別が明確であって②残業代として支払われていること(対価性)が必要であるところ、②が認められるには通常賃金部分と定額残業代部分が均衡していなくてはいけません。本件では、少なくとも②について、過去の裁判例を引用したうえで、基本給が10万円であるのに対して「乗務手当」が25万円であったので、均衡がないので定額残業代の支払として有効とは認められないという主張をして、裁判所はそれを認めました(その裏返しとして、時間単価は、基本給だけでなく基本給+乗務手当の合計額で算出されることになりました。)。ちなみに、この会社に対して、依頼者の同僚も別の弁護士に依頼して残業代請求をしたようなのですが、就労期間や労働時間などすべてほぼ同条件のもとで、その同僚が獲得できたのは300万円だったそうです。わかりやすい形で弁護士のウデが分かれた事案でした。