犯罪・刑事事件の解決事例
#医療過誤

小学4年生の男の子の転倒による硬膜外血腫に対し、経過観察を続けているうちに脳ヘルニアをきたし、植物状態になってしまった事案

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小林 洋二 弁護士が解決
所属事務所九州合同法律事務所
所在地福岡県 福岡市東区

この事例の依頼主

10代 男性

相談前の状況

小学4年生の男の子が、自転車で転んで頭を打ち、近所のクリニックで線状骨折・硬膜外血腫と診断され、総合病院に搬入されました。総合病院では、保存的に経過を見ることになりましたが、入院4日目の朝に瞳孔不同が出現、そのまま植物状態になってしまいました。「あんなに苦しんでいたのに、なぜ何もしてくれなかったのか」とお母さんが相談に来られました。

解決への流れ

入院して最初に撮影された頭部CTには、最大幅18㎜の硬膜外血腫が映っていました。この時点で血腫除去術を選択してもおかしくない大きさだと思います。担当医は、この時点で意識清明であったことから保存的に観察することにしたようですが、カルテをみると、患児は嘔吐を繰り返していますし、耐えがたい痛みの訴えにボルタレン座薬が6時間おきに挿肛されていますし、瞳孔不同が出現する数時間前には「意味不明な発語」がみられています。そこで、入院後速やかに血腫除去術を行うべきであった、遅くとも容態の悪化が明らかになった入院3日目には血腫除去術を行うべきであったとの注意義務を立て、損害賠償請求を行いました。示談成立までに1年以上かかりましたが、それは、植物状態になった患児を、今後どのようにケアしていくかという問題があったからです。お母さんは退院を望みつつも、子どもを自宅に引き取るための条件整備と、再入院が必要となった場合の受け皿に頭を悩ませていました。最終的には、示談書に、「乙(病院)は、甲(患児)が将来入院による治療や療養を必要とする状況になった場合は、可能な限り速やかに乙病院に甲を受け入れ、その治療を開始するものとする。ただし、同病院において、空きベッド等の関係で直ちに受け入れることが不可能な場合、同病院と同レベル以上の医療を提供できる他の医療機関を適切に紹介するものとする」という条項を入れて解決することになりました。

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小林 洋二 弁護士からのコメント

示談成立後、ICUで、担当医が患児とお母さんに謝罪をしました。涙ぐむ担当医に、院長が、「この患者さんのことを一生忘れないように」と声をかけていたことを印象深く記憶しています。この経験を活かして、同じことを繰りかえさないように頑張っていてほしいと心から思います。その後、お母さんは、さまざまな条件を整え、脳死状態になった子どもさんを自宅に連れ帰りました。それから約10カ月、周囲の協力を得ながら、自宅で、2人で過ごしたそうです。