この事例の依頼主
男性
相談前の状況
私(ご相談者)は妻子とともに、亡母と同居していました。母は、亡くなるまで五年程、身体が衰弱し自宅で療養しており、私たち家族は、母の生活を支えてきました。母は、死去20年前にアパートを建て所有し、入居者からの家賃で生計を立てていました。母の身体が弱ってからは、私が母に代わり、家賃の受取り・管理、固定資産税の納付、火災保険契約更新 ・保険料支払、新規入居者との契約手続などをしていました。母が亡くなった後、他の相続人から、母の生前まで遡り家賃収入の明細を出すよう求められ、私は、これに答えていました。しかし、他の相続人らは納得してくれず、不当利得返還請求訴訟を起こしてきました。
解決への流れ
ご相談者から、訴訟代理人として依頼を受けました。ご相談者と他の相続人らとの間では、お母さんの生前から、互いの立場の違い(年齢差、親との同居か別居か等)から、事実関係について共通の認識を得られにくく、ご相談者の家賃管理に対し不信感をもってみられている状況にありました。しかし、訴訟では、感情的な非難の応酬をおさえ、他の相続人に対しては、ご相談者がお母さんから任された家賃管理の経緯・状況や、家賃収入の経費や生活費への支出などを、できるだけ丁寧に説明するという態度で臨みました。最終的には、他の相続人から全ての請求を放棄してもらうという内容の和解で終了しました。アパートについては、別途遺産分割協議により他の相続人が取得することになりました。
お母さんの亡くなる前から、相続人間での立場の相違による認識のズレ、行き違いがみられ、蓄積された対立感情が、訴訟の形で一気に発露したという状況でした。ご相談者には、ご兄弟から訴えられることは、とてもお辛いことであり、また先行きの見えない不安にも包まれることになりました。弁護士は、訴訟の中で、有利な解決を目指しながら、ご依頼者に寄り添い「苦しいけれど一緒に前を向いて歩きましょう」とメッセージを発し続ける立場にあることを、再認識させられました。